白金測温抵抗体は、温度上昇に対して抵抗値がほぼ直線的に変化する特性をもっています。この特性は、DIN EN 60751規格で定義されています。
白金測温抵抗体の特性である直線的な抵抗値の変化(温度が上がると抵抗も上がる)
構造化された白金回路は、薄膜プロセスを使用してセラミック基板に蒸着され、感熱抵抗器として機能します。センサの電圧降下は高精度で測定され、温度に変換されます。他の種類として、巻線技術を使用した白金測温抵抗体があります。白金測温抵抗体は、-196℃~1000℃の広い温度範囲で動作します。
NTC(負の温度係数)サーミスタは、金属酸化物半導体セラミックから製造され、通常は厚膜プロセスまたは圧縮粉末プロセスで製造されます。温度が上昇すると指数関数的に抵抗が減少する負の温度特性が特徴です。抵抗の変化(電圧降下)を温度に換算できます。一般的な動作温度範囲は、白金測温抵抗体よりも狭いです。一般的なエポキシコーティングのチップサーミスタの温度範囲は-55℃~+150℃、ガラスコーティングのチップサーミスタの温度範囲は-55℃~+300℃です。
NTCは温度が上がると抵抗が下がり、2次関数的抵抗値の変化
Pt | NTC(一般的) | |
特性曲線 | - TCRの変化は温度変化に対して直線的に変化する - TCR: 3850 ppm/K(一般的) - DIN EN 60751に準拠した特性 |
- TCRの変化は温度変化に対して2次曲線的に変化する - 標準的な変化の値:-4.4 %/°C @ 25 °C |
標準抵抗値 | pt100 , pt200 , pt500 , pt1000 | 2.252k @ 25 °C, 10k @ 25 °C, 20k @ 25 °C |
構成 | - リード線付き素子 - SMDパッケージ、SOT223、TO92 |
エポキシまたはガラス封止; ダイオードパッケージ、SMDモデル、その他のバリエーション |
構成 | セラミック基板上に白金回路 | セラミック/金属(白金) |
動作温度範囲 | -196 °C~1000 °C | -100 °C ~ 300 °C 特殊タイプは750 °C まで |
なぜ白金測温抵抗体を使うのですか?
白金測温抵抗体は、DIN EN 60751規格に準拠したリニアな信号特性を持っています。この規格は、センサーの信号出力と公差を明確に定義し、センサーの選択と交換を容易にします。さらに、電子機器とソフトウェアの標準化を可能にします。異なるメーカーのNTCは類似した信号出力を持つかもしれませんが、NTCのための普遍的に認められた国際規格はありません。
白金温度素子は広い温度範囲にわたって高い精度で測温が可能です。例えばF0.3 Calssは-70 °C~+500 °Cの温度範囲に適用されます。NTCサーミスタも高精度での計測は可能ですが、一般的には0 °C~+70 °Cで、高精度での計測は狭い温度範囲でのみに限定される事がしばしばです。NTCメーカーは25℃での高精度を謳っていますが、これは通常、狭い温度範囲にのみ適用されます。
温度センサーは、使用中、特に高い使用温度で大きなストレスを受けます。高温耐性と耐薬品性という理想的な特性を持つ貴金属である白金は、温度測定に理想的な材料です。NTCサーミスタに比べ、白金温度センサはドリフト挙動に優れ、長期安定性が高く、再現性に優れ、より高い温度特性を持っています。
Pt | NTC (一般的) | |
測定ドリフト | - 非常に低いドリフト - 500 °Cで1000時間後、通常0.04 %ドリフト |
公称抵抗ドリフト:150 °Cで100時間後、通常0.35 |
精度 | - 広い温度範囲で高精度 DINで定義 - クラスF 0.3 / B: ± 0.12 % (± 0.3 °C) @ 0 °C - クラスF 0.15 / A: ± 0.06 % (± 0.15 °C) @ 0 °C - クラスF 0.1 / 1/3B: ± 0.04 % (± 0.10 °C) @ 0 °C |
- 比較的狭い温度範囲での高精度 - 代表値: ± 1 % @ 25 °C |
長期安定性 | 高温下での優れた長期安定性 | - NTCの安定性とアプリケーションの要件は一致させる必要がある - ガラスコーティングNTCは、標準的なエポキシコーティングNTCよりも高い安定性を持っています。 |
繰り返し精度 | 高精度と低ドリフトにより、広い温度範囲で高い繰返し精度を実現 | 限られた温度範囲で良好な精度、精度は寿命とアプリケーションの温度範囲に依存する |
プラチナ-高精度データの基盤
正確な温度データは、多くのプロセスを制御する鍵となります。ベースラインの状況を正確に把握することで、初めて有益な制御と最適化が可能になります。
一般的に課題は、実際の使用条件下での状況を把握することにあり、それはしばしば厳しいものです。場合によっては、温度を特別な精度で測定する必要があり、また、特に高温、低温の状況下であったりします。同じアプリケーションでも極端な高温、低温下で高精度の温度測定が必要な場合もあります。センサーには、高負荷な物質、連続動作などの絶え間ないストレスに耐えることが要求される場合もあります。
環境条件が急速かつ顕著に変化する場合でも、センサーは幅広い条件下で確実に機能し、且つ、均一な高精度のデータを提供する必要があります。プラチナ温度センサーは、困難な条件下でも、広い温度範囲で、特に正確な測定が可能です。また、信頼性が高く、長寿命であるため、一般的に最良の選択となります。
測定チェーン全体への影響
温度測定素子の性能とコストは、常にシステム全体と測定要件に関わってきます。温度センサーは、使用環境と信号処理に適切に適合することで、最高の性能を発揮します。
温度範囲が狭く、高精度が要求されないアプリケーションでは、NTCの性能で十分賄えます。NTCの場合、低温で温度範囲が狭い場合には大きな問題にはなりませんが、高温の測定ではNTCの温度計測特性が曲線的になる為、温度計測性能は大幅に減少します。
NTCサーミスタを使用する場合、温度範囲の拡大や精度の向上など、温度測定の追加要件があれば、さらなる課題が生じる。抵抗対温度特性が非線形であるため、より複雑な相互接続と信号処理エレクトロニクスが必要になる場合があります。特性曲線の線形化は、固有の線形化誤差によりシステム全体の精度に影響し、これは温度範囲が広いほど顕著になります。
NTCの機能特性を規定する国際規格がないため、設置されているセンサを交換する際には、互換性を確保する場合注意を払う必要があります。多くの場合、再校正が必要になり、交換に時間がかかります。
白金測温抵抗体には、この問題は発生しません。測定範囲全体にわたる高い測定精度と、直線的で標準化された特性曲線により、標準化された電子機器の使用と設計が可能になります。
センサー交換後の再校正は不要です。長期的にみて、センサーの再更生が不要である事は、特に複雑なシステムやセンサー・ネットワークに対して、メンテナンス・コストを低く抑え、稼働時間を最適化できるため、コスト削減に効果的です。